商略AI

マーケティング分析SaaS8社の料金比較。月額では比べられなかった

更新 一次調査6分

マーケティング分析SaaS 8社の公開価格を並べたところ、月額の数字を横一列にしても比較になりませんでした。 課金軸が顧客数、データソース数、ダッシュボード数、店舗数とばらばらで、通貨も米ドル・ユーロ・円が混ざっているためです。

「自社の月額は市場のどこにいるのか」を知りたくて調べたのですが、その問いには公開価格だけでは答えられませんでした。 何が分かって何が分からなかったかを出します。

マーケティング支援SaaS「商略AI」( https://shoryaku.net ) を作っています。この記事を最初に書いたときの価格はスタンダードが月額4,980円で、その後3段へ下げています(理由は後述)。有料顧客はまだゼロです。

8社の公開価格

各社の料金ページを開いて確認した内容です。(2026年9月4日時点) 為替換算はしていません。価格は変わるので、検討するときは各社の公式ページで最新を見てください。

サービス 公開価格 課金の単位
Gyro-n MEO 基本 ¥1,500/月(税別)、クチコミ対策パック ¥2,500 店舗数・キーワード数(追加ごとに +1,000円/月)
AgencyAnalytics Core $20 / client / 月(年払い) 顧客数
Supermetrics Starter $39/月(年払い)/$49(月払い)、Growth $159/$199、Pro $399/$499 出力先・データソース
DashThis Individual $44/月、Professional $139、Business $279、Standard $429 ダッシュボード数・データソース数
Databox Free $0、Analyst $64/月、Pro $159、Growth $399(年払い表示) データソース数
Swydo €62/月(年払い)/€69(月払い)。10データソース込み データソース数
Whatagraph Max €699/月(年払い)、Prime は個別見積 ソースクレジット
AIアナリスト(WACUL) 月額20万円 サービスプラン(税別・税込の記載なし)

月額を横に並べても比較にならない理由

上の表で、同じ意味の「月額」は1つもありません。

  • AgencyAnalytics の $20 は顧客1件あたりです。代理店が10社を扱えば $200 になります
  • Swydo の €62 は10データソース込みで、11件目から1件 €4.50 が乗ります
  • DashThis の $44 はダッシュボード3つ・データソース15件まで
  • Gyro-n MEO の ¥1,500 は1店舗・10キーワードまで
  • Databox の $64 は5データソースまで

「月額いくらか」ではなく「何を1単位として数えるか」が違います。 自社は1事業あたりの定額なので、この表のどれとも単位が揃いません。

通貨もそろっていません。$ と € と ¥ が混ざっていて、為替で順序が入れ替わる範囲の差しかない組み合わせもあります。この記事では換算していません。

それでも読み取れたことが2つあります。

  1. セルフサービスで完結する層は、月額 $20〜$64 に集まっている(AgencyAnalytics / Supermetrics / DashThis / Databox)。単位は違っても、入口の価格はこの帯にある
  2. その上下は売り方が変わる。 ¥1,500 の Gyro-n MEO は単機能、€699 の Whatagraph と月額20万円の WACUL は商談や導入支援が前提

自社は円建てで1事業あたりの定額なので、この帯の下側に置くと単位あたりでは近く、総額では安くなります。 ただし「同じものが安い」わけではありません。AgencyAnalytics は $20/client で複数顧客管理もホワイトラベルも含みます。含まれる範囲が違うものを、価格だけで並べても意味がありません。

公開価格から分からないこと

調べる前は「5,000円前後に競合が見当たらない=空いている」と読んでいました。これは公開価格から言えることではありませんでした。

公開ページから確認できないものが多すぎます。

  • 各社の広告費とチャネル別の顧客獲得コスト
  • 無料から有料への転換率、解約率
  • 実際の平均単価(値引き後にいくらで売れているか)
  • 個別見積の実際の金額(Whatagraph の Prime、Canly など)

つまり「その価格帯に競合がいない理由」は、公開情報からは決められません。 対象顧客が狭い、提供機能が違う、営業コストを価格に含めている、いずれもあり得ます。

自社の広告CACを別に計算した

競合の事情とは別に、自社の仮定でGoogle検索広告を試算しました。当時の月額4,980円に対する数字です。

入力 仮定値
クリック単価 ¥420
ページから登録へ進む割合 3%
登録から有料へ進む割合 15%
1件に必要なクリック 約222回
想定の顧客獲得コスト ¥93,333
売上ベースの回収 19か月

¥420 ÷ (3% × 15%) で、顧客1件の想定獲得コストは約9.3万円になります。クリック単価は当時取得したキーワード候補、2つの転換率は実績ではなく仮定です。19か月も、解約や資金繰りを保証する数字ではありません。

この試算から言えるのは、この仮定のまま広告で獲得する案は、初期の施策として重いことだけです。「この価格帯のSaaSは広告で売れない」とは言えません。

なお、原価の側は別に管理していて、AI原価の上限は売上の25%に固定しています(AI SaaSの原価は、実消費と月間上限の両方で管理する)。原価は価格の下限を決めますが、上限は決めません。

その後、値下げした

公開後に料金を下げました。スタンダードを2,980円、プロを4,980円にして、下に980円のライトを足しています。

根拠は競合価格ではありません。 上で書いたとおり、公開価格からは自社の位置が決められませんでした。変わったのは売り方です。

この記事を書いた時点 値下げの判断時点
獲得の主軸 1対1の直接販売 検索流入からの自走
価格の役割 会話の中で説明できる 価格が説明役を全部引き受ける
有料顧客 0社 0社

対話なしで判断してもらう導線に変えると、知らないサービスに月額4,980円を自分で払う判断は重くなります。測る前に価格を動かしたのではなく、価格が担う役割が変わったので動かしました。

有料顧客が0社のうちは、価格改定のコストがゼロだという事情もあります。既存契約の移行も、値下げの告知も要りません。変えるならこの時期しかないという判断が入っています。

価格を決める前に測ること

公開価格の調査は、自社の価格を決める材料にはなりませんでした。 代わりに次を測ります。

  1. 記事から試用まで進む割合
  2. 試用した人が最初の分析まで到達する割合
  3. その時点の月額で有料へ進む割合
  4. 1か月後・3か月後の継続
  5. 1社あたりのAI原価とサポート時間

「980円でも高い」と言われるなら、それは価格ではなく価値の問題として扱います。

まとめ

  • 8社の公開価格は、顧客数・データソース数・ダッシュボード数・店舗数と単位が違い、月額を横一列にできなかった
  • 通貨も $ / € / ¥ が混在。為替換算はしていない
  • 読み取れたのは「セルフサービス層の入口は $20〜$64 に集まる」「その上下は売り方が変わる」の2点まで
  • 競合がいない理由をCACだけに決めることはできない。 各社の獲得コストも転換率も公開されていない
  • 自社の広告CACは仮定上93,333円、回収19か月。これは自社の試算であって市場の事実ではない
  • 8日後に値下げしたが、根拠は競合価格ではなく売り方の変更