商略AI

M&A掲載のAI SaaS 11件は、すべて月商ゼロだった

更新 一次調査3分

M&Aサイトの掲載案件からAI関連SaaSを11件抜き出すと、売り手が開示した月商はすべてゼロでした。 掲載時の希望価格は8万円から1,000万円まで開いていますが、継続課金の実績を開示した案件はありませんでした。

これは成約価格の集計ではなく、AI SaaS市場全体の統計でもありません。確認できるのは、非無作為な掲載サンプルで「AIを使っていること」と「開発費をかけたこと」だけでは、売上の根拠になっていなかったことです。

個人開発でマーケティング支援SaaS「商略AI」( https://shoryaku.net )を作っています。自分のサービスが将来どのように評価されるかを知るため、M&Aサイトの案件を集計しました。

調査範囲

対象はラッコM&Aの「Webサービス・アプリ」カテゴリです。

項目 内容
母集団 全33ページ・約730件
収集範囲 8ページ(1〜6・15・25ページ)
収集件数 約180件
重複除外後 約160件
母集団に対する割合 約22%
調査時点 2026年8月24日

ページを無作為に選んだ調査ではありません。掲載内容も売り手の申告です。収益分布を含む調査全体は個人開発SaaSの売却相場は、希望価格だけでは分からないにまとめています。

AI関連SaaS 11件の掲載内容

調査メモでAI関連SaaSとして分類した案件は次の11件です。

案件 掲載時の希望価格 売り手申告の月商
AI議事録SaaS ¥250,000 ¥0
AIナレッジボットSaaS ¥250,000 ¥0
AI契約書レビューSaaS ¥200,000 ¥0
AI動画字幕SaaS ¥250,000 ¥0
AI営業提案生成SaaS ¥160,000 ¥0
AIチャットボットSaaS ¥400,000 ¥0
LLM露出分析プラットフォーム ¥500,000 ¥0
AI記事生成ツール ¥80,000 ¥0
AIスキルeラーニング ¥990,000 ¥0
営業支援AI ¥1,250,000 ¥0
Instagram分析ツール ¥10,000,000 ¥0(月間利益はマイナス8万円)

最初の4件は同じ出品者による掲載で、希望価格も20万〜25万円に揃っています。同一出品者の4件を独立した市場シグナルとして数えることはできません。 件数を見るときは、この偏りも含める必要があります。

「投げ売り」とは言えない

この記事の公開時は「月商ゼロのAI SaaSが投げ売りされている」というタイトルでした。強すぎる表現でした。

  • 表にあるのは成約価格ではなく希望価格です
  • 売れ残りか、値下げしたか、成約したかを11件すべて追跡していません
  • AIを使ったことが売上ゼロの原因だとは判定できません
  • 調査対象は全掲載案件の約22%で、無作為抽出でもありません

したがって言えるのは、この11件は月商ゼロの状態で掲載されていたことまでです。値段が安いから投げ売り、AIだから売れない、と因果を広げることはできません。

それでも判断材料になったこと

掲載文には、開発投資や機能の説明が詳しく書かれていました。それでも月商欄はゼロです。一方、同じ調査で継続課金の実績を開示していた案件には、次のような情報がありました。

案件 開示されていた継続課金の情報
中小企業向け経営SaaS 100社・2,123ユーザー
LINE予約SaaS 有料47社
Web制作+保守 月額20社・年契約7社

この比較から、買い手が必ず顧客数だけを評価するとまでは言えません。ただ、売り手が価格の根拠として示せる情報は、開発費より継続して払っている顧客のほうが具体的でした。

自分の優先順位も「機能を増やす」から「有料で使う1社を得る」へ変えました。AIモデルや画面の数は、月商ゼロという欄を埋めません。

無料プランではなく期間限定トライアルに絞ったのも、この調査だけで決めたわけではありませんが、支払い意思を測れる状態を先延ばしにしないという判断にはつながりました(SaaSの無料プランを置かず、14日トライアルに絞った理由)。

まとめ

  • AI関連SaaS 11件の申告月商はすべてゼロだった
  • 価格は成約価格ではなく、8万〜1,000万円の希望価格
  • 11件のうち4件は同一出品者で、調査全体も非無作為の約22%サンプル
  • この結果だけで「AI SaaSは売れない」「投げ売り」とは言えない
  • 少なくとも、AI機能や開発費だけでは継続課金の実績を代替できなかった