AIに売上アップの施策を提案させるコツと、商略AIの仕組み
ChatGPTやGeminiに「うちの売上を上げるには何をすればいいですか」と聞くと、たいてい正しい答えが返ってきます。SNSを継続的に更新する。SEO記事を増やす。広告を試す。どれも間違っていません。
間違ってはいないのですが、明日やることが決まりません。
理由ははっきりしていて、聞き方に3つ足りていないからです。採算が入っていない。今の数字を渡していない。何を根拠に言っているかを書かせていない。 この3つを足すだけで、返ってくる答えはかなり変わります。
マーケティング支援SaaS「商略AI」( https://shoryaku.net ) を作っています。この記事の前半は、無料のChatGPTやGeminiでもそのまま使える5つのコツです。後半で、それを毎回やらなくて済むように商略AIが何を仕組みにしたかを書きます。
コツ1: 「1件獲るのにいくらまで使えるか」を先に渡す
一番効くのがこれです。
AIに集客の相談をすると、たいてい予算の話は「月◯万円まで」で終わります。ところが、実行できるかどうかを決めるのは月の予算ではなく、顧客1件を獲得するのにいくらまで使えるか です。これをCAC上限と呼びます。
計算は難しくありません。
LTV = 1件あたりの売上 × 粗利率 × 続く回数
CAC上限 = LTV ÷ 3
同じ「4,980円の商品」でも、この数字は倍以上変わります。
| 月額4,980円のサービス | 1回4,980円のサービス | |
|---|---|---|
| 粗利率 | 85% | 70% |
| 続く回数 | 16ヶ月 | 8回 |
| LTV | 約67,700円 | 約27,900円 |
| CAC上限 | 約22,600円 | 約9,300円 |
上の事業は1件2万円かけて獲っても回収できますが、下の事業が同じことをすると赤字です。 ところが、この違いを伝えずに聞くと、AIは両方に同じ広告施策を勧めてきます。
続く回数が分からなければ、ざっくりで構いません。推測値だと伝えたうえで渡すほうが、渡さないより確実に精度が上がります。
うちの事業の数字は次のとおりです。
- 商品: (商品名)
- 価格: (1件あたりの売上と、月額か1回きりか)
- 粗利率: (分からなければ推測値と書いて構いません)
- 続く回数: (継続月数、または年間の来店回数×年数)
この数字からLTVとCAC上限(LTV÷3)を計算してください。
そのうえで施策を提案し、お金のかかる集客施策には
「顧客1件の獲得にいくらかかる見込みか」と
「CAC上限に収まるか」を必ず書いてください。
収まらないものは、推奨せずに理由を書いてください。
広告を検討しているなら、キーワードプランナーで調べたクリック単価も一緒に渡すと、より具体的になります。クリック単価 ÷(申込みに至る割合) で、1件獲るのにいくらかかるかがそのまま出ます。クリック単価420円、申込みに至る割合が0.45%なら、1件あたり約93,000円。上の表のCAC上限22,600円に対して4倍で、この時点で採用できないと分かります。
コツ2: 「同じ予算でできる別の案」を必ず並べさせる
AIは、聞かれた施策を肯定する方向に寄ります。「広告を出すべきですか」と聞けば、出す前提の答えが返ってきます。
これを防ぐには、採用しなかった案を書かせるのが早いです。
お金のかかる施策を挙げるときは、同じ予算・同じ工数でできる
無料または低コストの代替案を1つ並べ、
なぜそちらではなくこの施策を選ぶのかを書いてください。
「広告に月5万円」の隣に「同じ5万円分の時間でコンテンツを4本」が並ぶと、はじめて選べる状態になります。 片方しか出ていない提案は、比較を経ていないので、採用の判断ができません。
コツ3: 「止めたら消えるか、残るか」で分けさせる
SEO記事と広告を、同じ「今月やること」のリストに並べてはいけません。片方は3ヶ月後から効き始めて止めても残り、もう片方は翌日効いて止めれば消えます。性質が違うものを同じ順位表に入れると、必ず短期のほうが上に来ます。
各施策に次の2つを付けてください。
- 性質: 累積資産型(止めても効果が残る)/ フロー型(止めると消える)
- 効果が出るまで: 即時 / 1ヶ月以内 / 3ヶ月以上
そのうえで、今週やるものと、3ヶ月後のために仕込むものを分けて並べてください。
これを付けさせると、「無料で、30分で終わるから最優先」という並べ方が消えます。 着手のしやすさは、優先順位の理由になりません。
コツ4: 根拠にラベルを付けさせる
AIの答えは、実際に見た数字も、一般論も、推測も、全部同じ自信のある文体で出てきます。 見た目で区別がつかないので、区別を書かせます。
提案の根拠1つ1つに、次のラベルを付けてください。
- 実測: 私が渡した数字に基づく
- 登録情報: 私が説明した事業内容に基づく
- 一般原則: 一般的なマーケティングの原則
- 仮説: 裏付けのない推論
- データ不足: 判断に必要な数字が手元にない
根拠が「仮説」だけの施策は、実行案ではなく検証案として書いてください。
やってみると、思ったより「仮説」が多いはずです。それが分かること自体に価値があります。 全部が仮説の提案に時間を使う前に、足りない数字を先に取りに行けます。
コツ5: 「まだ判断できない」と言える余地を作る
AIは、聞かれれば必ず答えます。クリックが30件しかない広告を見せて「これは止めるべきですか」と聞けば、止めるべき理由を書いてくれます。30件では、良し悪しは分かりません。
答えの型を4つに分けて渡すと、この問題はほぼ消えます。
判断に必要なデータが足りない施策は、実行案にしないでください。
各施策を次の4つに分けてください。
- 実行: 渡した数字で判断できる
- 確認: まず管理画面で事実を確認する必要がある
- 観測: データ量が足りない。まず数字を貯める
- 見送り: 事業方針や今の状態と矛盾する
「観測」と「確認」が使えるようになると、AIが無理に断定しなくてよくなります。 これが一番、答えの質が上がる指示だと思っています。
毎回これをやるのは、正直しんどい
5つとも効きますが、実際にやると分かるのは、毎回同じものを貼り直す作業が発生することです。
- 事業の数字(価格、粗利率、続く回数)
- 今の実測値(アクセス、広告のクリックと費用、検索の表示回数)
- サイトの現状(どこにボタンがあり、どこに無いか)
- 前に出してもらって「これは合わない」と判断した施策
これを毎週やるくらいなら、仕組みにしたほうが早い。 商略AIはそこを引き受けるために作りました。
商略AIがやっていること
商略AIの中心にあるのは、今週から今月に実行するマーケティング施策を出す「改善提案」 です。上の5つを、人が指示しなくても毎回通るようにしてあります。
データは連携して自動で取ります。 Google Analytics、Search Console、Google広告、Meta広告、Instagramをつなぐと、以降は貼り直しが要りません。
LTVとCAC上限は自動で計算します。 収益モデル(売り切り / 月額・年額のサブスク / リピート来店 / 都度受注)を選ぶだけで、あとは計算されます。入力は任意です。 未入力なら業種と顧客タイプから既定値を当て、推定値であることを明示したうえでAIに渡します。広告を検討している場合は、キーワードのクリック単価から1件あたりの獲得コストを逆算して一緒に渡します。
そして、返ってきた施策をそのまま画面に出しません。 ここが手動との一番の違いです。
| 検証 | 条件を満たさないとき |
|---|---|
| お金のかかる施策に、獲得コストの試算と代替案があるか | その施策を表示しない |
| CAC上限を超える施策が最優先になっていないか | 優先度を1段下げる |
| 根拠が実測か、仮説か | 仮説中心の施策は確度を下げ、優先度も下げる |
| 判断に足るデータ量があるか | 「実行」から「観測」「確認」へ振り替える |
確度はAIの自己申告ではありません。 保存された根拠の種類とデータ量から、決まったルールで計算し直しています。AIが「最優先」と付けても、根拠が仮説ばかりなら次点に落ちますし、サイトの実物と矛盾していれば見送りになります。
残った施策は、1件ずつカードで出ます。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 優先度と時期 | 最優先 / 次点 / 検討、今週 / 来週 / 今月 |
| 性質 | 累積資産型 / フロー型、効果が出るまで(即時 / 1ヶ月以内 / 3ヶ月以上) |
| お金 | 想定コスト、想定CAC(CAC上限内 / 超過 / 検証目的) |
| KPI | 指標と、現状値から目標値、その計測方法 |
| 実行手順 | 3〜8ステップ。各ステップに所要時間 |
| 根拠 | 実測 / 登録情報 / 原則 / 仮説 / データ不足 のラベル付き |
| 前提とリスク | 実行前提、失敗要因、止めどき |
| 検討した代替案 | 採用しなかった案と、その理由 |
実行した施策は、14日後と28日後に数字を比べます。ここでも 「改善が観測された。因果は未確定」 という書き方をします。同じ期間に他のことも起きているので、断定できないからです。
出すのは提案までで、実行は自動化していません。 広告の入札変更やキャンペーンの作成は行わないので、最後に決めるのは人のままです。
試すには
改善提案の生成回数に上限はありません(クレジット残量の範囲内)。上限があるのは施策の作成・作り直しの回数で、ライト月10回、スタンダード月20回、プロ月25回です。ここで書いた獲得コストの判定と確度の計算は、どのプランでも同じように動きます。
14日間の無料トライアルは、開始時のカード登録なしで試せます。
手元のCSVで数字だけ先に見てみたい方には、登録不要の CSV売上診断 もあります。こちらはAIを使わない集計で、別の記事で説明しています。