商略AI

AIに広告とGA4の数字を、媒体ごとに分けて分析させる方法

マーケティング5分

Google広告、Meta広告、GA4、Search Consoleの数字をまとめてChatGPTに貼って「何を直せばいいですか」と聞くと、返ってくる答えはたいてい2種類のどちらかです。全部を足した1つの結論か、媒体ごとの一般論の羅列か。

原因は、AIの賢さではなく渡し方にあります。Google広告の「コンバージョン」とGA4の「キーイベント」は数え方が違うのに、同じ表に並べると足されます。先月止めた広告の数字が混ざると、その広告の悪化が「今の課題」に見えます。増減率をAIに計算させると、たまに間違えます。クリックが5回しかない行から「停止すべき」と断定されます。

マーケティング支援SaaS「商略AI」( https://shoryaku.net ) を作っています。この記事の前半は、無料のChatGPTやGeminiでそのまま使える、媒体ごとに分けて分析させる手順です。後半で、商略AIが同じことをどう自動化しているかを書きます。

数字をAIに渡す手段(CSVを貼る、MCPで繋ぐ)そのものはAIチャットに自社の数字を渡す3つの方法に書いたので、ここでは渡した後にどう分析させるかに絞ります。

手順1: 数字の下ごしらえは、AIに任せない

AIに読ませる前に、表計算で4つやっておきます。ここを飛ばすと、後の手順が全部ぶれます。

1. 配信中のものだけに絞る。 広告は、キャンペーンの状態が「有効」で、開始日を過ぎていて、終了日を過ぎていないものだけを残します。停止中や終了済みの行は表から外します。「以前の悪化」と「今の課題」を混ぜないためです。

2. 期間を揃える。 全媒体で「直近30日」と「その前の30日」の2列にします。Google広告は今日まで、GA4は昨日まで、Search Consoleは数日前までしかデータが無いので、期間を書き添えておきます。

3. 増減率は自分で計算する。 (今期 − 前期) ÷ |前期| × 100 を列に足します。前期が0で今期に数字があるなら「新規」、両方0なら「動きなし」と書き、増減率は空欄にします。AIには「計算し直すな」と指示します。

4. 標本が少ない行に印を付ける。 目安として、広告はクリック20未満、Meta広告は表示1,000未満かつ費用5,000未満、GA4はセッション10未満、Search Consoleは表示50未満の行に「標本不足」と書きます。この閾値は商略AIの実装で使っている値で、絶対の基準ではありません。大事なのは、少ない行から停止や増額の結論を出させないことです。

ここまでやると、表はこうなります。

| 対象 | 指標 | 今期 | 前期 | 増減率 | 標本 |
| キャンペーンA | 費用 | 42,000 | 38,000 | +10.5% | 十分 |
| キャンペーンA | コンバージョン | 6 | 9 | -33.3% | 十分 |
| キャンペーンA | CPA | 7,000 | 4,222 | +65.8% | 十分 |
| キャンペーンB | クリック | 8 | 3 | +166.7% | 標本不足 |

手順2: 媒体ごとに1回ずつ、同じ形式で聞く

全媒体を一度に貼らず、媒体ごとに別の会話で、同じ出力形式を指定して聞きます。次のプロンプトの【 】を媒体名に変えて使います。

あなたは【Google検索広告】の分析担当です。
下の表は計算済みの事実です。増減率を計算し直さず、表にない数字を新しく書かないでください。

前提:
- 期間は直近30日と、その前の30日です
- 配信中のキャンペーンだけを載せています
- 「標本不足」の行から、停止・増額・入札変更の結論を出さないでください
- この媒体以外(GA4、SNS、他の広告)の話はしないでください

事業の前提:
- 商品: (商品名と価格帯)
- 成果地点: (問い合わせ、購入など。何をコンバージョンと数えているか)
- 顧客1件にかけられる上限: (分かれば。分からなければ「未設定」)

表:
(ここに手順1の表を貼る)

次の形式で出してください。
1. 所見(最大6件): 事実 → 事業上の意味 → 根拠にした行 → 確度(高・中・低)
2. 優先して確認・着手すること(最大4件): 理由と根拠にした行
3. 足りないデータ(最大4件): 何が無いと判断できないか、どこで確認できるか

「最大6件」「根拠にした行」を指定するのは、件数を絞ると本当に大きい変化だけが残り、根拠の行を書かせると表に無い数字を作りにくくなるからです。

媒体ごとに、1〜2行だけ注意を足します。AIが間違えやすい場所は媒体で決まっています。

媒体 足す注意
Google検索広告 CTRが上がっても、コンバージョンが伴わなければ改善と書かない。競合の入札額や予算は推測せず「競争が強まった可能性」までにする
Meta広告 成果地点を設定していないなら、CPAやROASの良し悪しを書かない。広告の画像・動画は見ていないので、見出しと本文の文字だけで判断する
GA4 セッションやユーザー数が増えただけでは改善と書かない。キーイベントが「設定済みで0件」なのか「未設定」なのかを混同しない
Search Console 平均掲載順位は数値が小さいほど良い。クエリ別の合計は匿名化のため全体と一致しないので、矛盾として指摘しない

Meta広告の注意は特に効きます。成果地点が無い状態で「ROASが低いので停止」と言われても、そもそも成果を数えていないだけです。

手順3: 最後に1回だけ、媒体をまたいで聞く

媒体ごとの所見が出そろったら、新しい会話にそれを全部貼って、横断の質問を1回だけします。

以下は、媒体ごとに別々に出した所見です。

(媒体ごとの「所見」「優先すること」「足りないデータ」を貼る)

媒体をまたいで、集客 → サイト到達 → 主要な行動 → 問い合わせ・購入 のどこが最も詰まっているかを1つ選んでください。
そのうえで、次の30日で最初に確認または着手する1件を決めてください。

守ること:
- 媒体の数字を合算しない。Google広告のコンバージョンとGA4のキーイベントは数え方が違います
- 媒体ごとの所見が矛盾する場合は、無理に整合させず「矛盾している」と残す
- 所見に無い数字を書かない

順番が逆だと失敗します。 最初から横断で聞くと、AIは媒体ごとの制約(成果地点が無い、標本が少ない)を忘れて全体を語ります。媒体ごとに制約付きで読ませた結果を材料にするから、横断の結論が信用できます。

毎回これをやるのは、正直に言って大変です

手順1の表計算だけで、媒体が4つあれば1時間はかかります。配信状態の確認、期間合わせ、増減率、標本の印。これを毎月やるうちに、たいてい省略が始まります。省略した月の結論は、最初に書いた「全部足した1つの結論」に戻ります。

商略AIは、この手順をそのまま自動でやっています

商略AIの施策生成は、連携した媒体の数字を読んで売上アップの施策を提案する機能です。実行すると進捗に「媒体ごとの実績を分析しています」と出ますが、その中身がこの記事の手順1〜3です。

手順1に当たる下ごしらえは、AIではなくプログラムがやります。 広告は「有効」かつ開始日を過ぎ終了日を過ぎていないキャンペーンだけを対象にし、状態が取れないものは推測で対象に入れません。増減率、前期ゼロの区別、標本の十分・不足は全部コードで確定してからAIに渡します。AIには「計算済みの値をそのまま使う。表に無い数字を書かない」と指示しています。

手順2に当たる媒体別の分析は、7媒体に分けて並列で動きます。 Google検索広告、Googleディスプレイ広告、P-MAX、Meta広告、GA4、Search Console、Instagramで、それぞれ別の担当AIに別の注意事項を渡しています。上の表に書いた媒体別の注意は、実装のプロンプトから抜き出したものです。出力は所見6件、優先4件、不足データ4件までに絞り、存在しない根拠を参照した所見はプログラムが落とします。

手順3に当たる横断の整理は、その後の戦略の段階がやります。 媒体別の所見は根拠として登録され、最終的に画面に出る施策の「根拠」から辿れます。

連携できる媒体は、Google Analytics、Google Search Console、Google広告、Meta広告、Instagramの5つです(連携機能の説明)。Meta広告で成果地点を設定していない場合、表示回数やクリックの観測と計測設定の確認だけになり、CPAの良し悪しは出しません。広告の画像や動画そのものは取得していないので、クリエイティブの見た目の評価もしません。ここは記事の手順で自分でやる場合と同じ制約です。

まとめ

  • 全媒体を一度に貼ると、数え方の違う成果が足され、止めた広告が混ざる
  • 下ごしらえ(配信中だけ、期間を揃える、増減率、標本の印)は表計算で先に済ませる
  • 媒体ごとに別の会話で、同じ出力形式と媒体別の注意を付けて聞く
  • 横断の質問は最後に1回だけ。合算させず、矛盾は矛盾のまま残す
  • 商略AIは下ごしらえをコードで確定し、7媒体を分けて分析してから施策にまとめている

最初は、一番費用をかけている広告1媒体だけで手順1と2を試してみてください。同じ数字でも、貼り方を変えるだけで答えの具体度が変わることが分かります。